文脈により意味が異なる!?「モラルハザード」の3つの意味とは?

企業や行政機関での不祥事が発覚した際に見聞きすることも少なくない「モラルハザード」という言葉。

企業や行政機関の不祥事といった文脈においては、”倫理観や道徳の欠如”や、”倫理崩壊”などといった意味で用いられていますが、他の文脈では、これらの意味ではない意味で使われていることもあるため、「あれ、『モラルハザード』って、本当はどういう意味なんだ?」と感じるビジネスパーソンも少なくないはず。

実は、「モラルハザード」という言葉は使われている文脈により微妙に意味が異なるのです。

文脈により意味が異なる!?「モラルハザード」の3つの意味とは?

「モラルハザード」って難しいなぁ


moral hazard に由来するカタカナ語「モラルハザード」

私たちがニュースでよく目にするカタカナ語「モラルハザード」は、英語の moral hazard を語源とする言葉。

本来、この moral hazard という言葉は、保険業界や経済学の分野で用いられてきた専門用語であり、それぞれ独自の意味を持っていました。

しかし現在、カタカナ語として用いられている「モラルハザード」は、企業や行政機関で不祥事が生じた際に”倫理観や道徳の欠如”、”倫理崩壊”などといった意味で用いられています。

① 企業などの不祥事を伝えるニュースで用いられる「モラルハザード」

というわけで、まずは企業などの不祥事を伝えるニュースでよく用いられている「モラルハザード」の意味から再確認していきましょう。

私たちがニュースで見聞きする「モラルハザード」は、”倫理観や道徳の欠如”、”倫理崩壊”といった意味で用いられています。

ニュースで用いられる「モラルハザード」の意味
  • “倫理観や道徳の欠如”
  • “倫理崩壊”

しかし、この意味は moral hazard の直訳が広まったものではないかとされています。

確かに英語の moral hazard を直訳すると”道徳的危機”となり、”倫理観や道徳の欠如”や、”倫理崩壊”といった意味につながります。

しかし、先ほども述べた通り「モラルハザード」という言葉は、本来、保険業界や経済学の分野で用いられてきた用語です。

実は、”倫理観や道徳の欠如”、”倫理崩壊”などといった、現在、私たちが広くニュースなどで見聞きするこれらの意味は英語の moral hazard にはなく、日本で使われているカタカナ語「モラルハザード」独自の意味であるとされています(※英語の moral hazard にも”倫理観や道徳の欠如”、”倫理崩壊”などといった意味があるという説もあります)。

ですから、中には、これら”倫理観や道徳の欠如”、”倫理崩壊”などといった意味は誤用なのではないかと厳しく指摘する人もいます(※ただし和製英語として広まったと考えるならば、一概に誤用とは言えないのも事実です)。

② 保険業界で用いられる「モラルハザード」

一方、本来、保険業界で用いられてきた「モラルハザード」( moral hazard )には、どのような意味があったのでしょうか。

保険業界における「モラルハザード」には、”保険への加入が被保険者の注意義務を阻害するという現象”という意味があります。

簡単に言えば、”保険に加入することで、保険をかけてあるからと気が緩み、不注意(や故意)で事故を起こすことが増える事態”です。

保険業界で用いられる「モラルハザード」の意味
  • ”保険への加入が被保険者の注意義務を阻害するという現象”
  • ”保険に加入することで、保険をかけてあるからと気が緩み、不注意(や故意)で事故を起こすことが増える事態”

例えば自動車保険。保険を契約した加入者の中には、自動車保険に加入している安心感から気持ちにスキが生まれて安全運転をおろそかにしたり(極端な場合は保険金目当てに故意にキズをつけたり)するような人もいます。

繰り返しますが、保険業界における「モラルハザード」には”倫理観や道徳の欠如”という意味は含まれず、あくまでも”保険に加入することで、保険をかけてあるからと気が緩む”、そしてその結果として”不注意(や故意)で事故を起こすことが増える”という意味になります。

この保険業界で用いられてきた意味が、「モラルハザード」( moral hazard )の元々の意味です。

③ 経済学の分野で用いられる「モラルハザード」

また、経済学の分野における「モラルハザード」は、主に”情報の非対称性により効率的な資源配分が妨げられる現象”を指す言葉となります。

簡単に言えば、”他人の行動が観察できないことから起こる様々な問題”のことになります。

経済学で用いられる「モラルハザード」の意味
  • ”情報の非対称性により効率的な資源配分が妨げられる現象”
  • ”他人の行動が観察できないことから起こる様々な問題”

例えば固定給の外回り営業職。一生懸命に努力して働いても、努力しないでサボっていても給料額が同じであるなら、多くの外回り営業職は上司の目の届かないところでサボるでしょう。

このような”他人の行動が観察できないことから起こる様々な問題”、すなわち”情報の非対称性により効率的な資源配分が妨げられる現象”のことを、経済学の分野では「モラルハザード」( moral hazard )と呼びます。

また、先ほど挙げた保険業界で起きる「モラルハザード」、すなわち”保険への加入が被保険者の注意義務を阻害するという現象”は、、経済学においては、この”情報の非対称性”により生じているのではないかと考えらています。

つまり経済学における「モラルハザード」の意味のウエイトは、”情報の非対称性”に置かれているわけです。

本来は保険用語であった「モラルハザード」

「モラルハザード」( moral hazard )という言葉は、本来は保険用語であり、そこから経済学の分野、そして経済全般、さらには経済以外の領域で意味が拡大解釈されて用いられるようになった言葉だとされています。

ビジネスパーソンのみなさんが本などを読んでいる際に、「あれ、『モラルハザード』って、本当はどういう意味なんだ?」と感じた際には、どのような文脈で「モラルハザード」という言葉が用いられているのか、一度確認してみるとよいかもしれません。

なぜなら、保険業界にいる人が「モラルハザード」という言葉を用いる際には、保険業界で用いられる「モラルハザード」の意味をふまえたうえで用いているからです。

以上、「モラルハザード」という言葉の意味についての説明でした。みなさんの参考になれば幸いです。

「モラルハザード」について深く知る参考リンク

※本記事は2016年12月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。