「時候の挨拶」とは、手紙などの文章の冒頭で、季節にちなんだ挨拶をすることです。
日本の四季の豊かさを表現する伝統的な習慣で、相手の健康や安否を気遣う意味もあります。
ビジネスメールに「時候の挨拶」を入れるべき?
一般的には、初めてのメールやお礼・お詫びなどの場合は「時候の挨拶」を入れると丁寧な印象を与える一方、頻繁にやり取りする相手や簡潔に伝えたい内容の場合は、「時候の挨拶」を省略しても構わないと言われています。
ビジネスメールに「時候の挨拶」を入れるべきかどうかは、相手との関係やメールの目的によって異なり、一概に言えませんが、私は個人的に以下の条件で判断しています。
- 宛先が企業や団体の場合:時候の挨拶は入れない
- 宛先が個人で、通常の業務の範囲で依頼・御礼をする場合:時候の挨拶は入れない
- 宛先が個人で、通常の業務の範囲を超える特別な依頼・御礼・謝罪をする場合:最初のメールのみ時候の挨拶を入れる
昔、メールがなく手紙でやりとりしていた時代は、どんな相手でも「時候の挨拶」を入れるものでした。(よほど親しい相手に宛てた場合のみ省略。)
しかしメールが登場し、手紙より頻繁に送信するようになり「いちいち時候の挨拶を入れるのは大変だから、お互いに時候の挨拶は省略しましょう」という機運が生まれました。
手紙とくらべてメールは、送料や時間も(手紙は相手に届くまで数日)ほぼゼロなので、送信の頻度が大幅に増え、いちいち時候の挨拶を入れることが煩雑になったのですね。
そのため、「メールには普通は時候の挨拶を入れないが、あえて時候の挨拶を入れて送信する」という行為は、「このメールは特別に大事です」という差出人の意図を示すものになりました。
このような歴史を踏まえて、私は「通常の業務ではない特別な依頼・御礼・謝罪をする場合」かつ「最初のメール」のみに時候の挨拶を入れています。
また、宛先が企業や団体の場合は、時候の挨拶は入れません。
そもそも重要なメールであれば「企業や団体」を宛先にするのではなく「個人」を指名して宛先を書くべきで、逆にいうと、企業や団体が宛先になっているのは重要なメールではない…という考えからです。
英語には「時候の挨拶」はある?
英語に「時候の挨拶」に相当する表現はありません。
英語圏では、季節に関係なく、HelloやHiなどの一般的な挨拶で始めることが多いです。
ただし、特別なイベントや祝日がある場合は、それに触れることもあります。
例えば「Happy New Year」や「Merry Christmas」などで書き始めるということです。
世界の言語のうち「時候の挨拶」がある言語は?
明確なデータはありませんが、世界の言語のうち「時候の挨拶」がある言語は少ないと言われています。
日本語以外では、中国語や韓国語にも「時候の挨拶」がありますが、それぞれ日本語とは異なるルールや文化があります。
他の言語では、「時候の挨拶」をする習慣がないか、あっても非常に限定的な場合が多いようです。
一般的な時候の挨拶の例
1 月上旬の時候の挨拶
- 新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
- 初春の候、皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
- 寒さ厳しい折から、ご多忙のところ恐縮ですが、ご連絡申し上げます。
1 月中旬の時候の挨拶
- お正月も過ぎ、新しい年が始まりました。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
- 一寒四温の候、お身体にはくれぐれもご自愛くださいませ。
- 成人の日を迎えられた皆様には、心よりお祝い申し上げます。
1 月下旬の時候の挨拶
- 寒波が続き、大変な寒さですが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
- 節分を迎え、春の訪れを感じる今日この頃です。
- 明日は立春です。新たな一年が始まります。皆様にとって良い年でありますように。
2 月上旬の時候の挨拶
- 早春の候、お元気でお過ごしでしょうか。
- 節分の節、いかがお過ごしでしょうか。
- 立春を迎え、日ごとに春めいてまいりました。
2 月中旬の時候の挨拶
- 雨水の候、お身体にお変わりはありませんか。
- 梅の花が咲き始める頃、ご健勝のことと存じます。
- 寒さもひと段落し、春の足音が聞こえてまいりました。
2 月下旬の時候の挨拶
- 啓蟄を迎え、暖かな日が増えてまいりました。
- 春一番が吹き荒れる頃、お風邪など召されませんように。
- 桃の節句を迎え、お子様のご健康をお祈り申し上げます。
3 月上旬の時候の挨拶
- 三寒四温の候、お元気でお過ごしでしょうか。
- 春の訪れを感じる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
- 梅の花が咲き始める頃、ご健勝のことと存じます。
3 月中旬の時候の挨拶
- 桜の開花が待ち遠しい季節となりました。お変わりございませんか。
- 春分の日を迎え、昼と夜の長さが同じになる頃です。お身体にお気をつけください。
- 新年度を控え、ご多忙のことと思います。ご自愛くださいませ。
3 月下旬の時候の挨拶
- 桜が満開となり、華やかな季節となりました。ご機嫌いかがでしょうか。
- 新年度が始まり、新しい出会いや別れがある時期です。ご多幸をお祈りします。
- 春爛漫の候、心も躍ることでしょう。ご健康に留意されてください。
4 月上旬の時候の挨拶
- 春分を迎え、暖かさも増してきましたね。
- 春らしく穏やかな気候に心和む季節です。
- 春も半ばにさしかかり、花々が咲き乱れています。
4 月中旬の時候の挨拶
- 春はすっかり深まり、桜も満開ですね。
- 穏やかな日差しと心地よい風が心を癒してくれます。
- 新緑や花々が美しく彩る季節です。
4 月下旬の時候の挨拶
- 春も終わりに近づき、新たな気持ちで過ごしたいですね。
- 植物に恵みを与える雨が降る季節です。
- 春が去っていく寂しさも感じますが、次は夏がやってきますね。
5 月上旬の時候の挨拶
- 五月晴れの候、ご健勝のことと存じます。
- 新緑の候、ご多幸にあずかりますようお祈り申し上げます。
- 花冷えの候、ご自愛くださいませ。
5 月中旬の時候の挨拶
- 梅雨入り前の候、お元気でお過ごしでしょうか。
- 薫風やわらかな候、ご清祥のこととお慶び申し上げます。
- 端午の節句を迎える候、お子様のご健康をお祈りいたします。
5 月下旬の時候の挨拶
- 梅雨入りした候、いかがお過ごしでしょうか。
- 湿気が多くなる候、ご自愛くださいますようお願い申し上げます。
- 緑陰涼しき候、ご健勝のことと存じます。
6 月上旬の時候の挨拶
- 梅雨の季節に入り、じめじめとした日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
- 梅雨入りとともに、空気が湿って気温も高くなりました。体調管理には十分お気をつけください。
- 梅雨の晴れ間には、新緑が美しく輝いています。お忙しいとは思いますが、時々は自然に目を向けてみてはいかがでしょうか。
6 月中旬の時候の挨拶
- 梅雨真っ只中で、雨の日が多くなりましたね。洗濯物やカビなど、気になることも多いと思いますが、お元気でお過ごしください。
- 梅雨の長雨で、気分も沈みがちになりますが、明るい話題や楽しいことを探してみましょう。笑顔は心のビタミンです。
- 梅雨の中休みには、アジサイやユリなど、色とりどりの花が咲いています。雨に濡れた花びらは、なんとも言えない風情がありますね。
6 月下旬の時候の挨拶
- 梅雨もそろそろ明けるころでしょうか。夏本番に向けて、準備や計画を立てている方も多いのではないでしょうか。
- 梅雨明けを待ち望んでいますが、一方で台風やゲリラ豪雨など、気象災害にも注意が必要です。安全対策をしっかりと行ってください。
- 梅雨明けとともに、暑さも厳しくなります。熱中症や夏バテなどにはくれぐれもお気をつけください。水分や塩分の補給を忘れずにしてくださいね。
7 月上旬の時候の挨拶
- 梅雨入りし毎日蒸し暑い日々が続きますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
- いよいよ梅雨明けが近づき夏本番も迫っていますが、皆さまお身体の調子はいかがでしょうか。
- 向暑の候、貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
- 小暑の候、貴殿におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
7 月中旬の時候の挨拶
- 梅雨のジメジメとした蒸し暑さが終わりを迎え、からっとした夏空が広がる今日このごろ、夏休みの予定はお決まりですか。
- 蝉の鳴き声に夏の到来を感じさせられるこのごろですが、皆さまお変わりありませんでしょうか。
- 小暑の候、貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申しげます。
- 梅雨明けの候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。
7 月下旬の時候の挨拶
- 長い梅雨も明け力強い太陽が照り付ける時期となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
- 夏本番を感じさせる陽気が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
- 盛夏の候、貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
- 大暑の候、貴殿におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
8 月上旬の時候の挨拶
- 毎日暑い日が続いておりますが、お体にはくれぐれもお気をつけください。
- 猛暑日が続いておりますが、ご自愛くださいませ。
- 暑さ厳しい折からのご連絡、ありがとうございます。
8 月中旬の時候の挨拶
- 梅雨明けから一転して、日差しが強くなりましたね。水分補給をこまめにして、熱中症にお気をつけください。
- 夏本番となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。暑さ対策は万全でしょうか。
- 暑さも一段と厳しくなってまいりましたが、ご健康には十分お気をつけください。
8 月下旬の時候の挨拶
- 夏も終わりに近づきましたが、残暑はまだまだ厳しいですね。お身体を大切になさってください。
- 残暑お見舞い申し上げます。夏バテなどされていませんか。
- 暦の上では秋ですが、まだまだ暑い日が続きますね。ご自愛のほどお願い申し上げます。
9 月上旬の時候の挨拶
- 残暑お見舞い申し上げます。まだまだ暑い日が続きますが、ご自愛ください。
- 暦の上では秋ですが、日中はまだ夏のような暑さですね。体調を崩されませんように。
- 秋分の日を迎えましたが、夏の名残が感じられます。お元気でお過ごしでしょうか。
9 月中旬の時候の挨拶
- 朝晩は涼しくなりましたが、日中はまだ暑さが残っていますね。体調管理にお気をつけください。
- 秋らしい爽やかな日が続いていますね。お仕事も快適に進んでいらっしゃいますか。
- 秋風が心地よく感じられる季節になりました。お身体にご留意くださいませ。
9 月下旬の時候の挨拶
- 一日一日と秋が深まってきていますね。紅葉も見頃を迎えています。
- 秋晴れの日が多くなりましたね。お出かけも楽しい季節ですね。
- 日に日に寒さが増してきていますね。風邪などひかれませんように。
10 月上旬の時候の挨拶
- 10月に入り、秋らしい気候になってまいりました。皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
- 秋晴れの候、皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
- 秋風が心地よい季節となりました。皆様のご健勝とご発展を心よりお祈りいたします。
10 月中旬の時候の挨拶
- 紅葉が美しい季節となりました。皆様のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。
- 秋深まる候、皆様におかれましてはますますご清栄のことと存じます。
- 秋も深まり、一段と寒さが増してまいりました。皆様のご健康とご繁栄をお祈りいたします。
10 月下旬の時候の挨拶
- 10月も終わりに近づき、冬の気配が感じられるようになりました。皆様のご健康とご成功をお祈り申し上げます。
- 寒露の候、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。皆様のご健康とご幸運をお祈りいたします。
- 秋も後半となり、朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりました。皆様のご健康とご安全をお祈り申し上げます。
11 月上旬の時候の挨拶
- 木枯らし一号が吹き荒れる季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
- 紅葉が色づき始めるこの頃、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
- 朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりました。お身体には十分ご留意ください。
11 月中旬の時候の挨拶
- 紅葉狩りの盛りを迎える今日この頃、皆様におかれましてはご健勝のことと存じます。
- 秋深まるこの時期、貴社益々ご発展のことと心よりお喜び申し上げます。
- 一年で最も空気が澄んで見える季節です。ご多忙の中、ぜひ自然の美しさをお楽しみください。
11 月下旬の時候の挨拶
- 初雪が降り始めるころとなりました。皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
- 年末に向けて忙しくなるこの頃、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。
- 寒さが一段と厳しくなってまいりました。お身体にはくれぐれもお気をつけください。
12 月上旬の時候の挨拶
- 寒さが一段と厳しくなりましたが、お変わりありませんか。
- 朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりました。お身体にはくれぐれもお気をつけください。
- 年末に向けてお忙しいことと存じます。ご自愛くださいませ。
12 月中旬の時候の挨拶
- 冬至を迎え、日が短くなりました。お元気でお過ごしでしょうか。
- 年の瀬も近づき、慌ただしい日々が続いております。ご健康には十分お気をつけください。
- 寒空の下、ご多忙のことと思います。どうぞお体を大切になさってください。
12 月下旬の時候の挨拶
- 今年も残すところあとわずかとなりました。お元気でお過ごしでしょうか。
- 本年も大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。
- 新年を迎えるにあたり、ご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。