不当廉売はなぜ起きる?「ダンピング」の意味とは?

「イギリス政府は、中国が国際市場で鋼鉄製品を『ダンピング』価格で販売していることを非難した」「国内の宅配事業者は、運賃の『ダンピング』合戦に追い込まれた結果、低運賃にあえいでいる」……。

このように、ビジネス系の記事で見聞きする機会も多い「ダンピング」という言葉。いったいどのような意味があるのでしょうか?


不当廉売はなぜ起きる?「ダンピング」の意味とは?

ダンピング様々や!


英単語 dumping に由来するカタカナ語「ダンピング」

私たちがビジネス系の記事でよく目にする「ダンピング」は、英語の dumping を語源とする言葉。

英単語 dumping には、本来、”ゴミなどを投げ捨てること”や”投げ売り”といった意味があります。

英単語 dumping の意味
  • “ゴミなどを投げ捨てること”
  • “投げ売り”

カタカナ語「ダンピング」の意味とは?

日本で用いられるカタカナ語「ダンピング」は、採算を度外視し、原価割れしている製品を販売する”不当廉売”(読み方:”ふとうれんばい”)という意味で用いられます。

また、単に企業間の”安売り”競争を指して、「ダンピング」と呼ぶこともあります(例:「ダンピング」競争、「ダンピング」合戦など)。

いずれの意味においても、ネガティブなイメージがある言葉です。

カタカナ語「ダンピング」の意味
  • “不当廉売”
     ⇒採算を度外視し、原価割れしている製品を販売すること
  • “安売り”
     ⇒例:「ダンピング」競争、「ダンピング」合戦など

ちなみに日本国内においては、企業が(競争相手の顧客を獲得する目的で)”不当廉売”することは『独占禁止法』によって禁止されています。

「ダンピング」は輸出入に関連して用いられる言葉

「ダンピング」は、特に二国間の貿易、輸出入に関連して用いられる言葉です。

例えば、海外から輸入される製品が採算を度外視し原価割れしており(=「ダンピング」)、自国の産業を脅かしていると輸入国の政府に認められた場合、輸入国の政府は多くの場合において反「ダンピング」関税( Anti-Dumping Tax )を課すでしょう。

ちなみに、かつての日本の輸出産業は、企業努力によりアメリカでの市場シェアを伸ばしたにもかかわらず、アメリカの業界団体から「ダンピング」ではないかと提訴されることもありました(ジャパンバッシング)。

近年では、経済成長著しい中国の製品が「ダンピング」であるとされ、輸出相手国から反「ダンピング」関税( Anti-Dumping Tax )を課されるケースが多くなっています。

企業にとって不利益な「ダンピング」

と、ここでひとつの疑問が湧きます。

そもそも原価割れしている製品を、わざわざ輸出することは企業にとって不利益なこと。

にもかかわらず、なぜ企業が「ダンピング」をしてまで製品を売るのでしょうか。

「ダンピング」はなぜ起きる?

例えば工業製品。工業製品を生産するためには、大規模な生産設備や多数の従業員が必要です。企業は、国内及び輸出相手国の経済成長率や市場における需要をあらかじめ予測して生産計画を立て、設備投資ならびに従業員の雇用を行います。

企業の予測通りに国内及び輸出相手国の経済成長率や市場における需要があれば、特に問題はありません。しかし、企業の予測が外れたり様々な外的要因により、国内及び輸出相手国の経済成長率や市場における需要が急激に減少してしまうケースもあります。つまり企業の製品供給力が市場の需要を大幅に上回ってしまうケースです。

このように企業の製品供給力が市場の需要を大幅に上回るケースでは、一般的に企業は生産設備の稼働停止や従業員の解雇を行うことで対応しますが、それはそれで巨額の費用がかかるもの。

企業は、抱えた多くの在庫を製造コスト以下で「ダンピング」販売(=すなわち”投げ売り”)することで少しでも損失を穴埋めしようとしたり、場合によっては市場の需要が回復するまで、「ダンピング」を前提に生産設備を稼働・販売し続けることで、損失を最小限に抑えようとすることがあるのです。

企業が「ダンピング」をするメリット
  • 抱えた多くの在庫を「ダンピング」販売することで少しでも損失を穴埋めることができる
  • 「ダンピング」を前提に生産設備を稼働・販売し続けることで、損失を最小限に抑えることができる(可能性がある)

また上記の例以外にも、企業が市場シェアを獲得するために一時的に「ダンピング」を行う例や、特定の国の政府が産業振興策として輸出企業に対し補助金を与えることで、製造コスト以下での販売が可能になる「ダンピング」の例などもあります。

近年、話題になることが多い中国の製品の「ダンピング」問題は、国内需要を大幅に上回ってしまった過剰な生産設備の存在や、輸出企業に対する中国政府の補助金により引き起こされているのではないかと考えられています。

「ダンピング」の使い方(文例)

続いて、「ダンピング」という言葉を用いた具体的な文例についても見てみましょう。

「ダンピング」を用いた具体的な文例
  • アメリカ政府が、中国産鉄鋼製品に対し反「ダンピング」関税を課した。
  • イギリス政府は、中国が国際市場で鋼鉄製品を「ダンピング」価格で販売していることを非難した。
  • アメリカの大手家電メーカーが、アメリカ政府に対して中国で生産される洗濯機への反「ダンピング」関税を課すよう要求した。
  • EUは、域内の鉄鋼メーカーの保護に力を入れるため、中国産鉄鋼製品に対し反「ダンピング」関税の適用を検討している。
  • 国内の宅配事業者は、運賃の「ダンピング」合戦に追い込まれた結果、低運賃にあえいでいる。

このように用いられます。

「ダンピング」の同義語・類義語

「ダンピング」の同義語・類義語にはどのような言葉があるでしょうか?

「ダンピング」に似た言葉には、先ほども挙げた「不当廉売」や「投げ売り」、「安売り」などといった言葉があります。

「ダンピング」の同義語・類義語
  • 「不当廉売」
  • 「投げ売り」
  • 「安売り」

いずれにせよ、「ダンピング」という言葉はビジネス系の記事でもよく用いられる言葉なので、社会人の常識として意味を知っておきたいところです。

以上、「ダンピング」の意味と使い方についての説明でした。参考になれば幸いです。

「ダンピング」について深く知る参考リンク

※本記事は2016年9月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。