「やりがい搾取」の読み方、意味、語源、英語での表現は?

「やりがい搾取」の読み方、意味、語源、英語での表現は?

やりがい搾取(やりがいさくしゅ)は、経営者から労働者にやりがいを強く意識させることで、結果的に低賃金で働かせることを意味する造語です。

東京大学教授で教育社会学者の本田由紀さんが、2007年ごろから著書やメディアでこの言葉を使い始めました。

経営者と労働者の関係だけでなく、親会社と下請け会社の関係や、フリーランスの発注企業の関係でも、受注側の意欲を利用して労働や時間に見合った対価を支払わないことは「やりがい搾取」と呼ばれます。

例えば、次のような場合は「やりがい搾取」にあたる可能性があります。

このように、「やりがい」だけで仕事を続けることは、一見素晴らしいように見えますが、実際には自分の労働力や時間を適正に評価されていないことになります。

読み方は「やりがいさくしゅ」です。

「やりがい搾取」の由来は?

この言葉は東京大学教授で教育社会学者の本田由紀さんが、2007年ごろから、著書やメディアでこの言葉を使い始めました。

この言葉は、多くの人の共感を集め「やりがい搾取」は社会問題として注目されるようになりました。

特に、「ブラック企業」と呼ばれるような職場では、「やりがい搾取」が横行していると問題視されています。

そもそも「搾」は「強く押して締めつける。そのものに含まれた水分や液体を取り出す」という意味があります。

ようするに「しぼる」という意味です。例えば、「牛乳を搾る」「汗を搾る」などの使い方があります。

「取」は、「手に持つ。所有する。得る」という意味があります。例えば、「荷物を取る」「資格を取る」などの使い方があります。

これらの2つの漢字を組み合わせてできた言葉が「搾取」です。

「搾取」は、「乳などをしぼりとること」という意味と、「階級社会で、生産手段の所有者が生産手段を持たない直接生産者を必要労働時間以上に働かせ、そこから発生する剰余労働の生産物を無償で取得すること」という意味があります。

「しぼりとる」という意味ではない「搾取」という言葉は日本独自の造語です。 明治時代に、西洋の経済学や社会学を翻訳する際に、日本人が作った言葉です。

その中でも、特に有名なのが、ドイツの思想家カール・マルクスの著作『資本論』です。

マルクスは、資本主義社会における労働者と資本家の関係を分析し、労働者が資本家によって剥奪される過程を「Mehrwert」と呼びました。

この「Mehrwert」を日本語へ訳す際に、「搾取」という言葉が使われました。

マルクスは、「Mehrwert」を「労働者が必要労働時間以上に働いて生み出した価値であって、労働者自身はそれを受け取らず、資本家が無償で奪い取るもの」と定義しました。

この定義から、「しぼりとる」という意味の「搾取」という訳語をあてたと想像されます。

また「やりがい搾取」という言葉は、「やりがい」を強調することで「労働者が必要労働時間以上に働いて生み出した価値を資本家が奪い取る」という意味を込めて、「搾取」という言葉を使ったと思われます。

「やりがい搾取」は英語では?

「やりがい搾取」は日本語でよく使われる言葉ですが、英語ではどう表現するのでしょうか?

残念ながら「やりがい搾取」に相当する英語の単語はありません。

欧米では、自分の労働力や時間を適正に評価されていないと感じれば、すぐに転職活動をします。

そのため、「やりがい搾取」のような状況は起こりにくいと考えられています。

「やりがい搾取」に相当する英語の単語はありませんが、次のようなセンテンスで意味を説明できます。

例えば、「exploiting workers’ sense of fulfillment in their work instead of paying them properly」という表現が考えられます。

これは、「適切に支払う代わりに、労働者の仕事に対する充実感を利用する」という意味です。

もっと短く言うなら、「exploiting workers’ passion」という表現も使えます。 これは、「労働者の情熱を利用する」という意味です。

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