「年商」と「年収」の意味の違いとは…言葉のトリックに注意

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「『年商』10億円企業を経営する30代社長のお宅訪問」「『年収』10億円を稼ぐ若手実業家」……。

どちらも「すごい(小並感)」のですが、実は「年商」と「年収」は全く別物。”個人の収入”という観点から言えば「『年収』10億円を稼ぐ若手実業家」のほうが「かなりすごい(小並感)」と言えるのです。

というわけで、ここでは「年商」と「年収」という言葉の意味の違いについて考えてみます。

「年商」の意味

まずは先に「年商」の意味から。

読み方は”ねんしょう”。

「年商」とは、”会社の一年間の売上総額”という意味です。

ポイントは”会社”の部分。それから儲けが出ていよう(=黒字)が、儲けが出ていなかろう(=赤字)が一切関係ないという点も重要です。

「年商」額の大小よりも儲けの額や利益率のほうが大事

例えば「前年度の年商が30億円ある企業」と言えば聞こえはいいのですが、「でも5億円の赤字だったけどね」となれば、なーんだとなりますね。

ちなみに「前年度の年商が1億円で利益は5千万円の企業」があれば、年商こそ少ないもののかなり優秀な会社と言えるでしょう。

もちろん「年商」が多いことはそれだけですごいことは事実なのですが、一般的には「年商」額の大小よりも実際の儲けの額や利益率のほうが重要視されます。

「年商」(読み方:”ねんしょう”)の意味
  • ”会社の一年間の売上総額”
    ⇒ あくまで会社の売上
    ⇒ 黒字だろうが赤字だろうが関係ない
    ⇒ 一般的には「年商」額の大小よりも実際の儲けの額や利益率のほうが大事
とっつきにくい「限界利益」と「限界利益率」の意味とは? 「利益面については、堅調な受注を背景とした工場の安定稼働による『限界利益』の増加と合理化の徹底により、営業利益、経常利益および当期純利益は増益となる見込みです」「『限界利益率...

「年商」を用いた具体的な文例を見てみましょう。

「年商」を用いた具体的な文例
  • Aさんは「年商」300億の東証一部上場企業に勤めている。
  • ベンチャーキャピタルから20億円調達したスタートアップB社だが、「年商」はまだ1億円に満たない。
  • C社は「年商」50億あるが、3期連続赤字である。

と、このようになります。

「年商」は「売上高」とも呼ばれます。

「ねぇねぇ聞いて聞いて~、実は『執行役員』と合コンが決まったの~!マジサイコー!」……。と、某IT企業に勤める肉食系キラキラ女子・A子さんはウキウキで周囲に話しています。 でもちょっと待って!A子さんに水を差すようで申し訳ないのですが...

「年収」の意味

続いては「年収」の意味。

読み方は”ねんしゅう”。

「年収」とは、”個人が一年間で得る収入の総額”のことです。

ポイントは”個人”の部分。またこちらも「年商」同様に個人としての生活が黒字か赤字(例えば借金があるなど)かは一切関係ありません。

「年収」(読み方:”ねんしゅう”)の意味
  • ”個人が一年間で得る収入の総額”
    ⇒ 個人の収入
    ⇒ 黒字だろうが赤字だろうが関係ない

「年収」を用いた具体的な文例も見てみましょう。

「年収」を用いた具体的な文例
  • 会社を経営するAさんの「年収」は1億円以上あるそうだ。
  • B社の役員は最低でも「年収」5000万円だそうだ。
  • スタートアップベンチャーの「年収」は低いことで知られるが、成功すればリターンも大きい。

このようになります。

繰り返しますが、「年収」の意味は”個人が一年間で得る収入の総額”のことです。

「『年商』10億円企業を経営する30代社長」と「『年収』10億円を稼ぐ若手実業家」、すごいのはどっち?

と、ここで冒頭の「『年商』10億円企業を経営する30代社長」と「『年収』10億円を稼ぐ若手実業家」、二人の例に戻ります。

”個人の収入”という観点から見た場合、すごいのはどっち?ということになるのですが、「『年収』10億円を稼ぐ若手実業家」のほうが「かなりすごい」ことになるのです。

なぜなら「『年収』10億円を稼ぐ若手実業家」は10億円が丸々「年収」です(税引前)。

一方、「『年商』10億円企業を経営する30代社長」にとっての10億円は、あくまで「年商」。すなわち”会社の一年間の売上総額”に過ぎないのです。そこから人件費や仕入れ費用、地代などを引かなければなりません。利益率が高く「年収」1億あればなかなかですが、数百万円から1千万円前後が相場ではないでしょうか。いずれにせよ”個人の収入”という観点から見た場合、「『年収』10億円を稼ぐ若手実業家」には負けてしまうのです。

さらに言えば、会社に儲けが出ている(=黒字)のか、儲けが出ていない(=赤字)のか、「年商」という言葉からは全く分かりません。

「いやいや、企業経営って大変なのよ。年商10億円稼ぐのも大変だし、従業員を雇用するのも大変、だから『年商』10億円企業を経営する30代社長だってすごいし偉いと思うよ」という異論は認めます。あくまで”個人の収入”という観点から見た場合の結論です。

「年商」と「年収」、言葉のトリックに注意

以上、「年商」と「年収」の違いについてお分かりいただけたでしょうか。

「今度、『年商』3億円の会社を経営する社長と合コンするんだ♡」などと楽しそうに話す同僚に思わず嫉妬する女子もいるかと思いますが、「年収」ならいざ知らず、「年商」3億円程度であれば、「年収」的には普通のビジネスパーソンと合コンするのと大して差はない可能性が高いと考えてもよいでしょう(その後、その会社が売上や利益率を大きく伸ばしたり、上場したら話はまた別ですが……)。

一方、「今度『年収』3億円の社長と合コンするんだ♡」と同僚が話していたらおおいに悔しがってください。

いずれにせよ「年商」と「年収」、言葉のトリックには注意したいところです。

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以上、「年商」と「年収」の意味の違いについての説明でした。ビジネスパーソンのみなさんの参考になれば幸いです。

※本記事は2018年10月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。