「労働集約型産業」と「知識集約型産業」の意味の違いとは…「資本集約型産業」というのもある

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「伝統的な農業は、豊富な労働力が必要な点、生産性が低い点、低賃金であるという点などから『労働集約型産業』に位置付けられている」「イスラエルでは、製造業よりも集積回路の設計やセキュリティソフトの開発等、『知識集約型産業』が発展している」……。

このようにビジネス系の記事でまれに用いられる言葉に「労働集約型産業」と「知識集約型産業」というものがあります。

ここでは、それぞれの言葉にいったいどのような意味があるのかを考えてみます。

「労働集約型産業」と「知識集約型産業」それぞれの一般的な意味

まず先にそれぞれの言葉の一般的な意味を確認しましょう。

これらの言葉は、元々は経済学の用語として使われている言葉です。

「労働集約型産業」とは、一般的に”人間の肉体的労働に依存する割合が高い業種”を意味します。一方の「知識集約型産業」は、一般的に”人間の知的労働に依存する割合が高い業種”を指します。

「労働集約型産業」と「知識集約型産業」それぞれの意味
  • 「労働集約型産業」
     =”人間の肉体的労働に依存する割合が高い業種”
  • 「知識集約型産業」
     =”人間の知的労働に依存する割合が高い業種”

経済学の用語としての、これらの言葉の区別のポイントは、基本的にマンパワーの投入量とそこから生み出される生産量や利益との関係

例えば近代化される以前の農業。近代化前の農業は、人間の肉体的労働に依存する割合が高く、マンパワーの投入量が生み出す生産量や利益を決定しました。つまりマンパワーの投入量と生産量・利益が正の相関関係にある、このような産業を「労働集約型産業」と考えます。

一方で現代のインターネット業界。インターネット業界は、もちろんエンジニアの肉体的労働に依存する部分も多いのですが、比較的マンパワーの投入量が少なくてすむにもかかわらず、莫大な利益が上がりやすいのはみなさんもご存じのとおり(例:Google や Yahoo など)。単純な肉体労働よりも、特許や技術、既得権益、その他諸々の要素が利益を生み出す場合、それは「知識集約型産業」と定義されます。

現代の産業で考えた場合、上記の例の他にも、多くのマンパワーを必要とする(特に下請けの)建設業は「労働集約型産業」、少数の従業員が莫大な利益を生み出す(投資ファンドなどの)金融業は「知識集約型産業」の例と考えることができるでしょう。

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インターネット業界であっても、大した特許や技術、既得権益、その他諸々の要素を持たず、ベンチャーキャピタルに対し大風呂敷を広げて資本を集めるだけ集めて赤字という企業、あるいは赤字を垂れ流しても親会社のお情けだけで存続し続ける企業もある。このような企業は決して「知識集約型」だとは言えない。

「労働集約型産業」と「知識集約型産業」の特長

それぞれの産業の特長を少し詳しく考えてみましょう。

「労働集約型産業」の特長

「労働集約型産業」の特長は以下のようになります。

「労働集約型産業」の特長
  • 従業員一人当たりの売上高が比較的低い
     ⇒売上高に対する従業員数が比較的多い
  • 生産における人件費の割合が高い
  • ブルーカラーや非正規雇用の単純労働に依存する割合が高い
  • 単純労働であるため誰にでもできる仕事であることが多い
  • 従業員の平均給与は比較的低い
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身近な例を挙げると、先ほども紹介した(大規模経営や近代化がなされていない)農業や(特に下請けの)建設業、(アパレル業などマンパワーによる製造に依存する割合の高い)製造業、飲食店・介護・教育などのサービス業、小売業、アニメーション業界などがあります。

B to Cのサービス業は、多くの場合こちらに分類されます。

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「知識集約型産業」の特長

続いては「知識集約型産業」の特長です。

「知識集約型産業」の特長
  • 従業員一人当たりの売上高が比較的高い
     ⇒売上高に対する従業員数が比較的少ない
  • 生産における人件費の割合が低い
  • 特許や既得権益に依存する割合が高い
  • 少数の知的レベルの高い専門職に依存する割合が高い
  • 従業員の平均給与は比較的高い

こちらの身近な例を挙げると、金融業界や不動産業界、製薬業界、商社、大手IT企業などが挙げられるでしょう。

みなさんが勤める会社はどちらに分類されるでしょうか?

これらの業界は「資本集約型産業」(多くの資本を投入して利益を上げる産業)と考えられることも多い。
「労働集約型産業」と「知識集約型産業」は対概念ではないが、あえて対比すると上記のようになる。

一概に「労働集約型産業」と「知識集約型産業」と分類することができないケースもある

注意したいのは、現代においては、ひとつの産業をひとくくりに「労働集約型産業」と「知識集約型産業」と分類することができないことが多いという点。

例えば自動車業界。自動車業界のごく黎明期であれば部品製造や組立工程などで多くのマンパワーが必要とされたため、「労働集約型産業」と考えることができたのではないでしょうか。

しかし、現代においては部品製造や組立工程でまだ「労働集約型産業」的側面が残るものの、特許や技術、既得権益、その他諸々の要素が利益を生み出す点、工場の機械化、国際分業化などを踏まえると、「知識集約型産業」(あるいは「資本集約型産業」)的側面も強くなっています。

経済関係の記事で、このあたりについて言及されるとき、それぞれの言葉を使用する人の主観に依存するところも少なくありません。

現代の自動車業界は「資本集約型産業」と定義されることも多い。一方で、「自動車産業における組立工程は依然として『労働集約型』である」といった表記もされる。

具体的な文例

それぞれの言葉を用いた具体的な文例についても見てみましょう。

「労働集約型産業」を用いた具体的な文例
  • 「労働集約型産業」の仕事は基本的に誰にでもできる仕事であり、人の出入りも激しい。
  • 伝統的な農業は、豊富な労働力が必要な点、生産性が低い点、低賃金であるという点などから「労働集約型産業」に位置付けられている。
  • アニメーション業界の特に制作部門は、制作費に占める人件費の割合が高く、動画制作では人件費の安い国に下請けを発注するなど典型的な「労働集約型産業」である。
「知識集約型産業」を用いた具体的な文例
  • 製薬業界は、研究開発指向が強く付加価値の高い商品を販売するため、伝統的に「知識集約型産業」であるとされてきた。
  • イスラエルでは、製造業よりも集積回路の設計やセキュリティソフトの開発等、「知識集約型産業」が発展している。

このように用いられます。それぞれの言葉が持つ意味やイメージをつかめたでしょうか。

以上、「労働集約型産業」と「知識集約型産業」の意味と使い方についての説明でした。ビジネスパーソンのみなさんの参考になれば幸いです。

「労働集約型産業」と「知識集約型産業」について深く知る参考リンク
※本記事は2018年10月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。