ナレッジマネジメントのキホン「暗黙知」と「形式知」ってどんな意味?

「暗黙知」「形式知」は難しくない

ビジネスパーソンがよく聞く言葉「ナレッジマネジメント」とその主要な概念となる「暗黙知」と「形式知」。なんだか難しそうな言葉ですね。しかし、これらは難しい考え方ではないので、ビジネスパーソンとして基本的な意味ぐらいは知っておきたいところです。

ナレッジマネジメントのキホン「暗黙知」と「形式知」ってどんな意味?

「ナレッジマネジメント」とはナニモノ?

まずはビジネスパーソンとして知っておきたい「ナレッジマネジメント」の意味から。

「ナレッジマネジメント」とは野中郁次郎・現一橋大学名誉教授が提唱した”知識経営”を英語訳したもの。”知識”(ナレッジ=knowledge)を”経営”(マネジメント=management)に活用することを意味します。

「【ノウ】レッジ」ではなく「【ナ】レッジ」 「『ナレッジ』の蓄積」「『ナレッジ』の共有」「『ナレッジ』の管理」......。 このようにビジネス系の記事やビジネスシーンで見聞きする機会が多い「ナレッジ」という言葉。 いったいど...

「ナレッジマネジメント」が取り扱う領域は広範囲に及びますが、例えば優秀な営業社員の営業手法や成功事例といった”知識”をマニュアル化することも、基本的な「ナレッジマネジメント」だと言えるでしょう。

「ナレッジマネジメント」の一例

以下に具体例を挙げます。

基本的な「ナレッジマネジメント」の具体例

A社には会社独自の販売マニュアルがなく、アポ取りやクロージング、アフターフォローなど全ての業務を個々の営業社員に任せっきりにしていました。

そのため、優秀な営業社員は売上をガンガン上げる一方で、優秀でない営業社員の売上は低空飛行が続いたため、会社全体としての売上が伸び悩むことに。

そこで優秀な営業社員の営業手法や成功事例をマニュアル化し、優秀でない営業社員に真似をさせたところ、会社全体の売上が飛躍的に向上しました。

個人が持つ有益な”知識”を組織的に共有することは、「ナレッジマネジメント」の中でも特に基本である”知識共有化”(ナレッジ・シェアリング=knowledge sharing)と呼ばれ、組織内で”知識共有化”を図ることは、効率的な経営を可能にします。

そして、”知識共有化”においては、組織内の個人が持つ有益な”知識”である「暗黙知」を「形式知」化し共有することが重要だとされるのです。

「暗黙知」「形式知」とは何ぞや?

上記の例では、優秀な営業社員が個人的に持っている(マニュアル化されていない)”暗黙”のうちに作り上げられた営業手法や成功事例といった有益な”知識”が「暗黙知」となります(ちなみに”知”という語には”知識”という意味があります)。

一方、マニュアルのように”形式”化され組織的に共有されることになった営業手法や成功事例という有益な”知識”が「形式知」となるわけです。

以上を踏まえたうえで 「暗黙知」と「形式知」、それぞれの辞書的な意味を見ると理解がしやすいでしょう。

「暗黙知」と「形式知」の辞書的な意味
  • 「暗黙知」とは
    言語化することができない(あるいは言語化されていない)主観的な知識のこと。
  • 「形式知」とは
    言語化することができる(あるいは言語化された)客観的な知識のこと。

というわけで「ナレッジマネジメント」「暗黙知」「形式知」といった言葉は、決して難しい考え方ではありません。

「ナレッジマネジメント」「暗黙知」「形式知」は誰が考えた?

ビジネスパーソンならば、これらの「ナレッジマネジメント」や「暗黙知」「形式知」といった概念を誰が考えたのかについても知っておきたいところです。

まずハンガリーの化学者・哲学者であるマイケル=ポランニーが、哲学の分野で「暗黙知」の概念を提唱しました。

その後、日本人の経営学者である野中郁次郎・現一橋大学名誉教授が、ポランニーの「暗黙知」の概念を経営学に応用させ「形式知」の概念を生み出し、企業における”知識経営”、すなわち「ナレッジマネジメント」の重要性を提唱しました。

ちなみに野中氏が「ナレッジマネジメント」について説いた『知識創造企業』はビジネスパーソンにとって必読の書となっています。

野中氏はインタビューで次のように語っています。

たとえば、長嶋監督みたいにね、「ガーンといけ」「バーンといけ」というのではなく、野村監督のように、「どうしたらヒットが受けるか」「グリップの位置はどうこう」といった「ID野球」などは、見事なまでに、みずからのノウハウ(暗黙知)を言語化(形式知化)した例だと思うのです。

-「野中先生、なぜ経営学の道に進まれたのですか? 賢人の原点を探る――野中郁次郎×青野慶久」(サイボウズ式)より引用

ナレッジマネジメントという言葉の生みの親であり、日本の賢人ともよばれる 一橋大学 野中郁次郎先生の著書に経営者としての心得を学んだサイボウズ社長の青野慶久が、先生ご自身の学びの原点や、独自の理論が生ま…

「暗黙知」「形式知」のわかりやすい例えですね。

職人の世界は「暗黙知」中心の世界?

職人の親方が修業中の弟子に対して「目で見て盗め!」と叱咤するケースがあります。

もちろん長い修行の中で親方が弟子に細部を指導することがあるでしょう。しかし一般的に「目で見て盗め!」と叱咤する職人の世界は「暗黙知」が中心となる世界なのかもしれません。

2015年にはホリエモンこと堀江貴文氏が「寿司職人が何年も修行するのは無駄」という発言をして話題となりました。

寿司職人として一人前になるためには「飯炊き3年、握り8年」の修行が必要、などという話があるが、ホリエモンこと堀江貴文さん(43)がツイッターで、問題なのは職人としてのセンスであり「何年も修行するのはバカだ」と切り捨てた。寿司職人になるためには修行をするのはナンセンスで、料理学校に数か月間通えばなれるものだし、自己流でや...

意見の賛否は別にして、大企業の経営者であった堀江氏の目には「暗黙知」中心である職人の世界が非効率的であると映ったのかもしれません。

「暗黙知」「形式知」を理解したら「SECIモデル(セキモデル)」へ

「ナレッジマネジメント」には「暗黙知」や「形式知」の概念をさらに応用させ、より高次の知識を生み出す「SECIモデル(セキモデル)」というフレームワークがあります。

SECI model / セキモデル

「暗黙知」「形式知」の概念の意味を知るだけでは物足りないビジネスパーソンは、ぜひ「SECIモデル」に理解にチャレンジしてみてください。

「ナレッジマネジメント」「暗黙知」「形式知」について深く知る参考リンク

※本記事は2016年1月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。