赤字じゃないのに倒産!?「黒字倒産」とはどういう意味?

できれば起きてほしくない企業の倒産。

一般的には、恒常的に商品の売上不振に悩む赤字企業が代金などの支払いに窮し、やむなく倒産してしまうイメージがあります。しかし一方で、きちんと売上がありバランスシート上での黒字が見込めていたとしても倒産してしまう「黒字倒産」というケースも存在します。

この「黒字倒産」は、いったいなぜ起きるのでしょうか?

赤字じゃないのに倒産!?「黒字倒産」とはどういう意味?

お金は入ってくる予定なんです……


「黒字倒産」の意味と「黒字倒産」が起きる原因

「黒字倒産」の意味は、文字通り”(バランスシート上では)黒字である会社が倒産してしまうこと”。

(バランスシート上では)黒字であっても、短期的な運転資金がショートする、つまり取引先や銀行など金融機関への支払いができなくなってしまうことで「黒字倒産」が起こります。

会社のキャッシュ(現金)に余裕があれば倒産しない

話を単純化して考えてみましょう。

卸売商社であるA社がB社から1億円分の商品販売を受注し、5月1日にB社に商品を納入、6月1日にB社から商品代金の支払いを受けるとします。

A社は5月1日までに商品を用意しなければなりませんが、商品を用意するには(A社の利益分を差し引いた)数千万円分の資金が必要になります。

もし、用意する商品にかかった数千万円分の費用の支払い日が、B社から1億円の商品代金の支払いを受ける6月1日以降だったら、B社から受け取った1億円から支払えばよいので問題は起きません。

問題となるのは、6月1日以前に費用の支払いを行わなければならないケースです。もちろん、A社にキャッシュ(現金)があり運転資金の余裕があれば、用意する商品にかかった費用の支払いはできます。

資金繰りができなければ黒字でも倒産する

A社にキャッシュ(現金)の余裕がなく運転資金が不足し、用意する商品にかかった費用の支払いが支払期日までにできない場合、A社には倒産の危険性が出てきます。

企業にキャッシュ(現金)の余裕がない場合、普通ならば、取引のある銀行などの金融機関から運転資金の資金調達をしますが、何らかの事情で金融機関から融資を受けられないケースがあります。また金融機関が融資を約束していたものの、突然融資が受けられなくなることもあるでしょう。

A社の場合、B社から1億円の商品代金の支払いを受ける6月1日以前の支払期日までに、商品を用意するのにかかった費用の支払いのための資金繰りができなければ、売上が見込めている(バランスシート上は黒字となる)にもかかわらず、A社は資金難となり倒産してしまうのです。

このように運転資金の資金繰りができなければ、いくら業績が好調で利益が見込める会社であっても、いきなり「黒字倒産」という”突然死”を迎えてしまうのです。

だいぶ単純化しましたが、これが「黒字倒産」が起きる基本的な仕組みになります。

業績の急拡大が「黒字倒産」を引き起こすという不可思議なケース

上記の「黒字倒産」が起きる基本的な仕組みがわかれば、業績の急拡大が「黒字倒産」を引き起こすという不可思議なケースも理解できるでしょう。

会社の体力以上の契約を受注してしまうことで運転資金や法人税の支払額が急激に増加、短期的に資金繰りが行き詰まってしまい、支払期日までに費用の支払いができなくなってしまうのです。

「黒字倒産」と粉飾決算・不正会計

「黒字倒産」の中には、本来は赤字であるにもかかわらず粉飾決算や不正会計を行い決算が黒字に見えるようにしている事例も少なからずあるようです。

粉飾決算や不正会計による決算の黒字化が行われる理由は、決して見栄を張るために行われるのものではありません。主に銀行など金融機関から資金調達をするために、好決算を装う必要があるとされています。

仮に債務超過(資産よりも負債のほうが多い)状態に陥ったら、銀行など金融機関からの借入金を期限前に返済するよう求められてしまうケースも出てきます。そこで、”銀行からお金を引っ張るため黒字のふりをする”というわけです。

さらに建設業や許認可事業といった業種では、債務超過状態になると公共事業への入札や許認可の更新ができなくなるいった問題も生じます。そのため債務超過を隠すために恒常的に粉飾決算や不正会計が行われ、結果的に黒字に見えていたというケースも出てくるのです。

なぜ赤字でも倒産しない会社があるの?

また、世の中には何年も赤字が続いても倒産しない会社が存在します。

それらの会社は、過去に蓄積してきた資産を食いつぶしながら存命していたり、(将来的に黒字が見込めるなどの理由で)赤字であっても、銀行などの金融機関から運転資金の資金調達が順調にできているため倒産しないと考えることができます。

ただし、過去に蓄積してきた資産を食いつぶしてしまったり、(将来的に黒字が見込めないなどの理由で)銀行などの金融機関が融資を停止したり借入金を期限前に返済するよう求めてくれば、たちまち倒産の可能性は高まります。

キャッシュ(現金)は命よりも重い!?

福本伸行氏の漫画『賭博黙示録カイジ』。登場人物である利根川幸雄のセリフに「金は命より重い」という言葉があります。

賛否両論のある言葉ですが、少なくとも企業経営においては名言でしょう。

企業経営では、会計上では売上が立っていても実際にキャッシュ(現金)が入ってこなければ全く意味がありません。

支払期日までに支払いのための資金繰りができなければ、業績が好調であっても会社は倒産してしまいます。「キャッシュ・イズ・キング(現金こそが王様)」という言葉もあるように「金は(会社の)命より重い」のです。

以上、社会人の常識として「黒字倒産」という言葉の意味するところを知っておきたいものです。

※本記事は2016年4月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。