「地位が人を作る」が行き過ぎるとどうなるか…「スタンフォード監獄実験」とは?

「地位が人を作る」が行き過ぎるとどうなるか?

ビジネスの世界には「地位が人を作る」という言葉があります。”ある人物をそれなりの役職に就けることで、その人物が実力を発揮する”という意味を持つ言葉です。

しかし「地位が人を作る」の言葉を過信しすぎてもいけないと体感的に理解しているビジネスパーソンも少なくないはず。そう、適切な人物を適切な地位に就ける必要性があるのです。

そこで、ここでは「スタンフォード監獄実験」と呼ばれるアメリカで行われた実験と、「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」という昔から日本にある言葉について紹介します。


「地位が人を作る」が行き過ぎるとどうなるか…「スタンフォード監獄実験」とは?

地位は人を変えるんですよ……


「地位が人を作る」の意味とは?

冒頭でも述べた通り、ビジネスの世界には”ある人物をそれなりの役職に就けることで、その人物が実力を発揮する”ことを期待する「地位が人を作る」という格言があります。

「地位が人を作る」の意味
  • ”ある人物をそれなりの役職に就けることで、その人物が実力を発揮する”

この言葉の本質は、ある人物に地位(例えば役職)を与えることで、彼もしくは彼女に責任感やリーダーシップが芽生え、その結果として本来持つ能力以上の力が発揮されるだろうという前向きな期待であり、ある意味、性善説に基づいた考え方です。

人格的に優れている人材に対し、それなりの地位を与えることで「地位が人を作る」効果が生じるのはもちろんですが、人格的に劣っている人材に対しても、地位を与えることは有効だとされています。

例えば、自分本位で同僚のことを一切考えず、常に自身の営業成績のことしか頭にないトラブルメーカーであった人物をリーダーに配置したところ、気づきを得て責任感が芽生え、優秀なリーダーとして活躍した……。みなさんも、このようなストーリーをどこかで聞いたことがあるかもしれません。

また、ビジネスの話とは関係ありませんが、学校内において不良に地位を与えることで更生することを期待する教育方法もあるそうです。

「商品を試着したまま店の外に出て着心地を確かめられるサービスは、『性善説』に基づいて実施されている」「情報漏洩(ろうえい)を防ぐためには、『性悪説』に基づく厳格なセキュリティ管理をしなければならない」......。 ...

一方、地位を与えることの危険性を示唆した有名な実験もある

しかし、「地位が人を作る」という、人が本来持つ善性に期待した前向きな言葉がある一方で、無闇に地位を与えることの危険性を示唆する有名な実験があることも、ビジネスパーソンとしては知っておきたいところ。

その実験とは、1971年にアメリカのスタンフォード大学で行われた「スタンフォード監獄実験」と呼ばれるものです。

「スタンフォード監獄実験」とは?

「スタンフォード監獄実験」とは、1971年にアメリカのスタンフォード大学で心理学者フィリップ・ジンバルドーが2週間の予定で行った心理学の実験。

大学構内に架空の刑務所(実験監獄)を設置し、学生を囚人役と看守役に分けて、それぞれの役割を演じさせたところ、学生たちは時間が経つに連れ、(あくまで実験であるにもかかわらず)囚人役の学生はより本物の囚人らしく、看守役の学生はより本物の看守らしい行動をとるようになっていったのです。

さらに実験の過程において、強い権力を与えられた一部の看守役の学生が次第に暴走。囚人役の学生に対し、実験では予定されていなかった罰則を勝手に与えるなど非人道的な態度を取るようになり、実験はわずか6日間で終了しました。

この「スタンフォード監獄実験」は、無闇に人に地位を与えることのネガティブな面を明らかにした実験として知られます。

「スタンフォード監獄実験」とは?
  • 1971年にアメリカのスタンフォード大学で行われた心理学の実験
  • 強い権力を与えられた一部の看守役の学生が次第に暴走した
  • 地位を与えることのネガティブな面を明らかにした

もちろん「地位が人を作る」という言葉は一つの真理です。しかし適切な人物を適切な地位に就けないと、地位、すなわち権力を手にした一部の人間が暴走してしまう「スタンフォード監獄実験」と同様の結果になりかねないのです。

サイバーエージェントの藤田晋社長は人格を重視

ここで、インターネット関連企業として躍進したサイバーエージェント社の藤田晋社長が、かつて経済誌で語っていた内容を紹介したいと思います。以下のような人物が社員にいた場合、管理職としてふさわしい順に並べるとどうなるかという話です。

管理職としてふさわしい順に並べるとどうなるか
  • A 人格がよくて、実績のある人
  • B 人格が悪くて、実績のある人
  • C 人格がよくて、実績のない人

藤田社長は A → C → B の順に選択します。つまり管理職に上げる際には仕事の実績より人格を重視するのだとか。

ネットベンチャー企業である弊社は、(中略)クリエイティビティーに溢れた社員の存在が不可欠だ。弊社のような企業にとって、上にいい顔をするために部下のアイデアを利用したり、保身のために部下の優れたアイデアを潰したりするモラルに欠けた管理職の存在は、最悪なのである。特に、実績があって人格の悪い人間、つまりBタイプの社員は絶対管理職に上げないようにしている。

人格劣る稼ぎ頭は、出世させるべきか-プレジデントオンラインより引用
最も重視しているのは、提案者自身が自らのアイデアに熱狂しているかだ。

異論はあるかもしれませんが「人格的に劣っている人は管理職になっても、すなわち地位を与えられても変わらない」と読み換えることができます。

そう、「地位が人を作る」を真っ向から否定しているのです。

「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」

日本には古くから「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」という言葉があります。

誰の言葉であるのかには諸説がありますが、一般的には西郷隆盛が遺した言葉ではないかとされています。

「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」
  • 国家に功労がある人には、それなりの禄を与えよ。功労があるからといって、地位を与えてはならない。地位を与えるにはおのずと、地位を与えるにふさわしい見識がなければならない。功労があるからといって、見識もないのにそれを与えるということは、国家崩壊のもとになってしまう-西郷隆盛

「禄」とは、今風に言えば「ボーナス」のこと。この言葉は”いくら実績があっても人格が伴わない人物ならば地位を与えずに一時的なボーナスを与えなさい、地位は人格の伴った人に与えなさい”と言っているのです。

西郷は、人格面を考慮せずに無闇に地位(=役職)を与えてしまうとどうなるか、「地位が人を作る」が行き過ぎるとどうなるか、「スタンフォード監獄実験」のようになってしまうのではないのか-そのことをよく知っていたのでしょう。

いずれにせよ、「地位が人を作る」、「スタンフォード監獄実験」、「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」、この三つの言葉はビジネスパーソンとして知っておいて損はない言葉かもしれません。みなさんの参考になれば幸いです。

※本記事は2016年7月時点の情報を元に執筆されたものです。あらかじめご了承ください。