「善処します」とは? 英語にするなら「前置き+断り+理由+代替案+謝罪+感謝」の6ステップで

「善処します」とは? 英語にするなら「前置き+断り+理由+代替案+謝罪+感謝」の6ステップで

善処します(ぜんしょします)は「状況に応じて適切に処理します」という意味です。

しかし逆に言えば「状況によっては処理をしない」ことも意味に含むので、1969年、日米首脳会談で大問題が起きました。

「善処します」というと「状況に応じて適切に処理します」と約束したことになります。

例えば、上司や取引先から何か依頼されたときに、「善処します」と返事をすると、できるだけその要望に応えようと努力するという姿勢を示すことができます。

「善処」の読み方は「ぜんしょ」です。

「善処します」が生んだ「世紀の誤訳」

1969年11月21日、当時の日本の佐藤栄作首相は、アメリカ大統領のリチャード・ニクソンと会談しました。

佐藤首相は、沖縄返還交渉やベトナム戦争などの重要な話題を持って、ワシントンを訪問してホワイトハウスで会談にのぞみました。

会談の中で、ニクソン大統領は、日本の繊維製品の対米輸出が増えすぎているとして、自主規制を求めました。

当時のアメリカでは、繊維産業が衰退しており、国内の雇用や産業保護の観点から、日本からの安価な繊維製品の流入に反発が強まっていました。 ニクソン大統領も、選挙で南部繊維業者の支持を得るために、繊維問題の解決を公約に掲げていました。

しかし、佐藤首相は、日本の経済成長や国際競争力を考えると、対米繊維輸出を自主規制することに消極的でした。 そこで、佐藤首相は、ニクソン大統領の要求に対して、「善処します」と答えました。

「善処する」とは、「物事の状況に応じて適切に処理をする」ことですが、それは必ずしも「処理する」ことを約束するものではありません。

「物事の状況に応じては処理をしない」ことも「善処する」の意味には含まれます。

このとき佐藤首相は、「何もしない」に近い意味で「善処します」と言ったのですが、当時のその場に同席した通訳者は「I will do my best」と英語に訳しました。

これは、「私は最善を尽くします」という意味で、英語では積極的な姿勢を示す言い方です。

この訳によって、ニクソン大統領は、佐藤首相が自主規制に積極的に同意したと誤解しました。

ところが、日本側はいつになっても対米繊維輸出を減らす動きを見せませんでした。日本側としては「善処します」と答えることで、「やんわりと断った」つもりだったのです。

アメリカ側は日本が約束を反故にしたと感じて不満を募らせました。この一件が原因で、日米関係はたいへん悪化したと言われています。

このように、「善処します」という言葉は、使う場面や相手によっては注意が必要な言葉でもあります。

場合によっては、「できる限りやってみます」という断定を避けるニュアンスや、「遠回しに断る」ニュアンスも含まれることがあります。

「善処します」はどう英訳すべきか

それでは「善処します」はどう英語に訳すべきでしょうか。

この言葉は、ビジネスシーンでよく使われる言葉ですが、実はとても曖昧な表現なのです。

「善処します」というのは、本来「物事をうまく処置すること」や「状況に応じて適正な対処をすること」を意味しています。

ただ、日米首脳会談での誤訳事件からみるように、「必ず行う」という約束ではありません。

では、どうすればいいのでしょうか。一番簡単な方法は「善処します」という言葉を使わないことです。

「善処します」と言っても、「できるだけ努力します」「前向きに検討します(が一旦保留するかもしれません)」「これまでのことは水に流して今後は努力します」といったニュアンスを含みます。

しかし、このような曖昧な表現を外国語に訳して、細かなニュアンスまで伝えることは困難です。

外国語に訳すなら、答えは「イエス」か「ノー」で、中間はないのです。

対処の仕方やする内容が決まっている場合は、「xxの対処をします」「xxするべく対処をしています」などと具体的に言うようにしましょう。

例えば、「納期短縮の依頼に対して善処します」という場合は、「We will expedite the delivery as much as possible.」(できるだけ納期を早めます)や「We are working on speeding up the delivery process.」(納期を早めるための作業をしています)と言えます。

もし、対処の仕方やする内容が決まっていない場合や、要望に応えられない場合は、どうすればいいのでしょうか。

その場合は、「善処します」という言葉ではなく、「前置き+断り+理由+代替案+謝罪+感謝」の6つのステップで返答することがおすすめです。

「前置き+断り+理由+代替案+謝罪+感謝」の6つのステップ

前置き

まず、前置きとして、相手が「要望や依頼を出してきたこと」自体に対して理解を示す言葉を入れます。

これは、相手の要望を言語的には理解していることを伝えるとともに、相手と関係性を維持するために重要なステップです。

例えば、「Thank you for your email.」や「I appreciate your interest in our product.」などです。

断り

次に、断りとして、自分が相手の要望や依頼に応えられないことを伝えます。

例えば、「Unfortunately, I cannot …」や「I’m afraid I’m not able to …」などです。

ここでは、残念だという気持ちを表す副詞や恐縮だという気持ちを表すフレーズを使って、直接的な否定を和らげます。

理由

その後、理由として、自分が相手の要望や依頼に応えられない理由を説明します。

例えば、「… because we are out of stock.」や「… because we have a strict policy.」などです。

ここでは、客観的な事実やルールを挙げて、自分の判断ではなく状況によるものだということを示します。

代替案

さらに、代替案として、自分が相手の要望や依頼に代わることができることを提案します。

例えば、「However, I can …」や「Alternatively, you can …」などです。

ここでは、しかしや代わりにという接続詞や副詞を使って、前の文と対比させます。

また、可能形や助言形を使って、提案できる範囲や方法を示します。

謝罪

そして、謝罪として、自分が相手の要望や依頼に応えられなかったことに対して謝罪します。

例えば、「I apologize for any inconvenience caused.」や「I’m sorry for the trouble.」などです。

ここでは、不便や迷惑という言葉を使って、相手の不満や困りごとに対する同情を表現します。

感謝

最後に、感謝として、相手の理解や協力に対して感謝の言葉を述べます。

例えば、「Thank you for your understanding.」や「I appreciate your cooperation.」などです。

ここでは、理解や協力という言葉を使って、相手にも好意的な態度を求めることを表現します。

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